以下、プロジェクトX風でお送りします。
慶応大4年の佐野川リョウの夢は大リーガーになることだ。
その夢を叶えるため彼は今、アリゾナ州で開かれている合同トライアウトに参加している。
周りにいるのは大柄で体格的に恵まれた選手ばかり。
その中でプレーする佐野川リョウは一回り小さく見える。
彼を笑う者もいるかもしれない。その小さな体でメジャーリーガーを目指すのか?と。
しかし彼が一度マウンドに立てば、場は静まり返ることになるだろう。
佐野川リョウの投じる魔球によって。
その魔球とはナックルボール。
球速は100キロそこそこではあるが、驚くべきはその変化の仕方だ。
無回転で投じられるボールは、空気抵抗を受けて不規則に変化する。
よく言われるのは「左右にぶれるように揺れながら落ちる。」
しかし、佐野川が投じるナックルボールは従来のものとは質が違った。
彼と対峙したバッターに言わせれば、「大きく曲がることもあるし、急に伸びてくることもある。予測ができない。」
佐野川はいかにしてその魔球を身につけたのか。
佐野川リョウがナックルボールを習得するきっかけとなったのは、中学1年の時にティム・ウェイクフィールドのビデオを見たことだ。(追記にてティム・ウェイクフィールドの解説あり)
当時佐野川は投手志望でありながら、身体つきが小さかったため内野手を務めていた。
そんな彼にとって、ティム・ウェイクフィールドの投じるナックルボールが次々と打者を打ち取る様は衝撃だった。
「この球を覚えることができれば。。。」
その日から佐野川リョウの猛特訓の日々が始まったのだ。
まず苦労したのは球の握り方だった。教本通りやってはみるものの、うまくいかない。
当時彼の周りにナックルボールを扱える者はなく、独学で習得するほかなかったのだ。
誰にもアドバイスをもらえない状況で、試行錯誤は続いた。
そしてある時彼は気づく。
「自分のやりやすいやり方でいいのではないか?」と。
セオリーに囚われないやり方、それが佐野川リョウにとって活路となった。
そして3年の月日が経ち、佐野川リョウのナックルボールが完成した。
そして現在、アメリカの地で佐野川リョウは戦っている。
かつて憧れたメジャーリーガーになるために。
彼のナックルボールが世界を騒がすのもそう遠い日ではないのかもしれない。
そして彼はその時こう呼ばれることになるだろう。
ティム・ウェイクフィールドの再来と。
※追記
ティム・ウェイクフィールドはナックルボールを武器にメジャー通算200勝を挙げた投手。主にボストン・レッドソックスでプレイした。
彼の投じるナックルボールの球速は120kmほどだったという。
しかし専属の捕手を必要とするほど、彼の球は不規則に変化したようだ。

http://akaiakina.diarynote.jp/201202181703082986/
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