1958年に発見されたものの、それからずっと正体が分からなかった巨大幼生が「オキアナゴ」と判明したそうですね。
※幼生(ようせい)とは何?
→動物が卵から成体へと成長していく間に、成体とは異なる体の形で活動する期間があります。この時の体の形のことを幼生といいます。分かりやすい例を挙げると、カエルは卵→オタマジャクシ→カエルという流れで成長していきますが、この場合オタマジャクシが幼生にあたります。
今回、謎の巨大幼生の正体を特定したのは水産研究・教育機構などの研究チームで、方法として用いたのはDNA解析でした。
なぜ巨大幼生の正体を特定するのに50年以上もかかったのでしょうか?
そこには、幼生について我々人類が未だに解明できていない謎が関係していました。
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1958年に発見されていた謎の巨大幼生とは?
今回「オキアナゴ」であると判明した巨大幼生は、1958年にアメリカの研究者によって発見されていたものでした。
捕獲されたのはカナダ沖の太平洋でしたが、当時の研究者達は親を特定することが出来ませんでした。その後も特定のために色々と手を尽くしたそうですが、結局親は分からずじまいでした。
その謎の巨大幼生の画像がこちら(↓)
※画像左下の白い線が5cmにあたります。なのでこの幼生は20cm以上あることになりますね。

オキアナゴはどんな魚? 食べられるの?
巨大幼生の親であることが分かったオキアナゴとはどのような魚なのでしょうか?
硬骨魚綱ウナギ目アナゴ科に属する海水魚。全長50センチメートルに達し、本州中部以南の太平洋沿岸のやや深海に産する。
出典 コトバンク

オキアナゴは非常にどう猛で、深い海の底ではクジラの死骸に群がって漁っている様子が観察されたことがあります。
オキアナゴの味についてですが、この魚は基本的に食用ではなく、市場でも値段はつかずに「未利用魚」として捨てられることが多いようです。←漁師の話だと焼いて干しておくと良い味になるそうです。
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なぜ50年以上も正体不明だったのか?
ウナギやアナゴの幼生は「レプトセファルス」と呼ばれていて、先ほど画像で紹介したような透明な葉っぱもしくは布きれのような形をしています。
※レプトセファルスはギリシャ語で「小さな頭」を意味します。
実はこのレプトセファルスについては、今でも分かっていないことがたくさんあるのです。
例えば、「レプトセファルスが何をエサとして成長していくのか?」ということ。
この部分が分からないため、レプトセファルスを成長させて親がどの魚なのかを特定するというような方法がとれないのです。
また、仮にエサが判明しても、今度は食べさせ方が分からないということになります。「口はどこなのか?」「口を開けさせるにはどうする?」といった謎が未だに残されています。
このため、1958年にアメリカの研究者達が発見していた巨大幼生についてもお手上げ状態だったというわけです。
今回、水産研究・教育機構の黒木洋明さんが謎の巨大幼生と同じDNAを持つオキアナゴを捕まえたことが親の特定につながったそうですが、もしこの偶然がなければおそらくずっと謎のままだったでしょうね。
ウナギの完全養殖が難しい訳はレプトセファルスが関係していた!
読者の皆さんはウナギの養殖について聞いたことがあるでしょうか?
実はわれわれがスーパーなどで見るウナギは養殖のものも多く売られています。
ウナギを養殖する方法としては、川の河口などで「シラスウナギ」を捕獲して成長させる方法をとっています。これが一般に言う「養殖ウナギ」です。ちなみに、「シラスウナギ」はウナギの幼生(レプトセファルス)から一段階成長した形態をさします。
※ウナギの成長過程は?
卵→幼生(レプトセファルス)→シラスウナギ→ウナギ
画像は卵から幼生(レプトセファルス)までの成長過程をみたもの(↓)

では「完全養殖」という言葉を聞いたことがありますか?
これは普通の養殖とは違い、ウナギを卵の状態から育てる養殖方法になります。
ここで問題となってくるのが、ウナギの幼生であるレプトセファルスです。
先ほど話した通り、レプトセファルスについては謎が多く残されています。なので、卵の状態からレプトセファルスまで育てることができても、そこからシラスウナギに成長させることがなかなか難しくなってくるのです。これがウナギの完全養殖が難しいと言われる理由です。
ところが、最近はかなり研究がすすんできて、2010年に完全養殖は可能になったと発表されています。
現状の課題は大量生産ができないことらしいので、完全養殖のウナギが店頭にならぶのはまだまだ先になりそうですね。
まとめ
ウナギやアナゴの幼生であるレプトセファルスですが、過去には1.8mに及ぶものも発見されているそうです。
その幼生の正体は一体なんなのか・・・?今はまだ謎のようですが、今回みたくいずれ正体が明らかにされる日がくるかもしれませんね。
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